煮出し師

“煮出し”とは、素材から旨味成分や栄養を抽出する方法を指し、現在の「出汁(だし)」の語源ともなった言葉です。「煮出し師」は、この“煮出し”に関する幅広い知識と技術を習得し、『だし藏』が実施する厳しい検定試験に合格した人で、『だし藏』の“だし”の商品開発や品質の維持、管理をすると同時に、和食“だし”の魅力と正しい知識を広く発信して、皆さんと一緒に“究極のだし”づくりを目指します。

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名人に聞くだし自論 Vol.01 【日本料理とだしの関係】

和食の料理人は、一番だしにこだわる

日本料理が無形文化遺産になり、世界的にもその調理法が注目を集めています。だしは、日本料理の中心にあるべき存在で、だしなくして旨い和食ができないと言い切ってもいいでしょう。俗に日本料理は、素材の味を引き出すために繊細だといわれています。中でも関西は淡い味を好み、それを出すためにはどうしてもだしの味が影響してしまいます。よく関西は一括りに薄口といわれていますが、実は京都と大阪では差があるのです。京は公家社会なので汗をかかず、そのために濃いものを求めませんが、大坂は商人の町。汗かいて働く人が多かったので同じ淡い味付けでもしっかりしたのを好んだのです。その味わいをうまく表現するためには、昔からだしの良し悪しが決め手だったのでしょう。

料理研究家・佐川進氏

日本では古代より煮るという技術が用いられ、魚介類を煮た時に出る煮汁も活用していました。その後、焼いた魚を干してだしを摂るという概念が生まれ、昆布や鰹のだしの登場で、料理は一気に進化していきました。当然、西洋や中国にもだしはあり、前者では「ブイヨン・フォン」と呼びますし、後者は「湯(タン)」と表現します。ただそれらと日本のだしが決定的に違うのは、煮出し時間の差。牛肉、鶏肉、魚などで摂るブイヨンやフォン、湯はかなり長い時間を要し、煮詰めていきます。これは技巧を次々に盛り上げていったり、表面を積み重ねていくのが西洋や中国料理の手法だから。それに対し、和食のだしは、わずか数分でエッセンスを摂り出すのが特徴です。但し、そのもとになる原料の生産にはかなりの時間を要している ので短時間でできるとは言い切れない事実も隠されてはいるのですが・・・。

旨いだしを摂るには、素材(昆布や鰹節)が良質であるのが第一の条件。そして分量や温度、タイミングなど細かな点もそこに加わって来ます。だしは繊細なので、その手法がちょっと違っただけでも良さが出なくなってしまいます。特に我々和食の職人は、昆布と鰹節で摂った一番だしに最も気を遣い、その確かさで職人の腕がわかるとまでいわれています。会席料理店でまず椀物が入るのは、その良さをわかってもらいたいがため。吸物の味でその店の風格を判断してもらおうとの、いわば料理人からのメッセージなのです。

料理人同様、家庭でも昆布と鰹節からだしを引くのが理想ですが、流石に忙しい主婦は、いつもそれを実践するわけにはいきません。そんな時にだしパックを利用するのもいいでしょう。但し、それもいいものを使わねばいいだしは出ないのです。私が使った印象では「関西おだし」は、さっぱりして香りもあって黄金色がきれい。後で調味料を加えることをいかして設計されているようで使いやすい品でした。料理の基本は、だしにあり!我々和食の職人がこだわるように、家庭でもその重要さを感じて調理してほしいと思っています。

(注)一般的に鰹節は、半年以上かけて熟成させますし、
片や昆布は、主に二年成長したものをとって加工します。

料理研究家・佐川進氏
関西おだしを使った野菜の白和え